ちょっと書いてみた。
スランプっぽいですが、ぬるい13です。
誰にでも定位置というものがある。
それは立っている場所だったり、仕事でのポジションだったり、飲み会での座る位置だったり、様々。
しかし、今回はそういった類の話ではない。
「いのはらー」
「なによ・・・って、ちょ、アンタ、ねぇ」
名前を呼ばれ、顔を向けるなりぎゅうっと腕の中に閉じ込められる。
ほぼ同じ身長なのに、さかもとくんの鼻の先はいつも俺の首筋に埋まる。
彼の穏やかな呼吸が当たって正直くすぐったい。
そっと背中に手を回してやると、何が面白いんだか知らないんだけどこの人は笑う。
「いま、何時?」
「・・・六時。相変わらず早起きだね、おじいちゃん」
「お前だって起きてんじゃねぇかよ」
「俺の場合は仕事柄」
朝の情報番組が始まってから、俺の生活スタイルは規則正しくなり。
せっかくの休日にもかかわらず、自然と目が覚めてしまうようになった。
その時間がどうやらさかもとくんの起床時間と同じらしい。
一度起きてしまえば目が冴えてしまって、このまま眠っているのももったいない気がして。
俺はさかもとくんの背に回していた手で彼の身体を軽くひと叩きした。
「そろそろ起きたいんですけど」
「うーん」
「アンタが離してくれないと起きれないんですけど」
「つれねぇな、朝から」
「朝からベタベタしてくる方がどうかと思いますよ、俺は」
「じゃあ力ずくで離れりゃいいじゃねぇか」
俺はそんなに力を入れて抱きしめてるわけじゃねぇだろ、と意地悪な口調でそんな言葉を吐き出すさかもとくん。
途端、俺の顔の温度は上昇する。
俺の心情がそっくりそのままこの人に読まれているようで、悔しい。
せめてもの抵抗と睨み付けてやると、急にさかもとくんの顔が近づいてきた。
ちゅ、と俺の頬と額に一回ずつ、キスが落とされる。
愛おしさがたくさん籠められているのが分かるほどのそれに、俺の頭の中はぐるぐるした。
しかし、当の本人は至って普通で、再び俺の首元に鼻先を埋める。
「もうちょっと一緒に居ようぜ、いのはら」
「・・・まぁ、いいけど」
いつもと同じ姿勢で、身体をそっと寄り添えながら。
俺はさかもとくんの背に手を回し、再び目を閉じるのだった。
END