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あまりにも

忙しすぎて更新作業が出来ていないので、簡単なものをちまちまあげられるようにカテゴリー追加しました。
「ベリーショートストーリー」略してSSS。
たまーに浮かんだSSにならないお話の破片だったり、お題を使ったお話だったりをアップ出来たらいいなーと思います。


今日は二つ。
一つは13でもう一つは23になってます。
読んでくださる方は「ベリーショートストーリー」をクリックしてくださいませ。


■掌で熱をはかる(13)

熱が出た。
何だか頭痛い喉も痛い身体の節々も痛いこれって年の所為?と思ってたら、風邪だった。
タイミングよくオフだったので、布団に包まっている。
さっきまで寒くてガタガタ震えていたのに、今は全身が熱ぼったい。
ぼんやりする頭で水が飲みたいと思ったけど、身体が思ったように動いてくれなくて。
もう寝てしまえば楽になるだろうと、目を閉じた時だった。


ガタッ


ガチャガチャ


バタン


たすたすたす


「おーい、生きてるかー」

色んな物音の後、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
答えようとしても、掠れた唸り声しか出ない。
懸命に手を上げてみたら、買い物袋をガサガサ言わせながら近寄ってくる我らがリーダー。

なんでこの人が俺の家に来てんの?
ってか、普段物凄く鈍感なくせに俺が風邪引いた情報なんて何処で仕入れてきたんだ?

そんな疑問をぐるぐるめぐらせていると、サカモトくんは軽々と腕を回して俺の上半身を起こし、抱きかかえながら額に手をやった。
あ、ちょっとひんやりして気持ちいい。

「熱酷いな。お前、ただ寝てるだけなのかよ」
「・・・ぅ・・・」
「ちょっと待ってろ」

そう言うなり俺を元通り横たえ、サカモトくんがキッチンに消えていく。
何故か、さっきより少し楽になった気がした。
別に薬を飲んだわけでも、魔法をかけられたわけでも無いのに。
サカモトくんが来てくれたから、だろうか。
そうだとしたら、俺ってすっげぇ現金なヤツだと思う。
がっしゃがっしゃと音を立てて何かを持ってきたかと思って目を開ければ、タオルに包まれた何かが目に入ってきた。

「氷枕作ったから頭上げろ」
「・・・ん」
「一応冷えピタも貼っとけ。あと、ポカリ飲め」
「うん」
「これから卵粥作ってやるから、大人しく寝てるんだぞ」
「・・・はぁい」

甲斐甲斐しく俺の看病に勤しむサカモトくん。
いつもよりちょっとだけ優しい態度に、俺はこっそり嬉しくなる。
へらへら笑っていると、それを目撃したサカモトくんは途端に変な顔になった。

「熱で頭イカれたか?」
「どうしてそういうこと、いうのよー」
「だってお前、いつもに増してすげぇ顔になってるから」
「こういうかおが、すきなんだろ?」

熱に浮かれた頭でそう言って困らせてやろうとしたのに。
サカモトくんは少し目を泳がせてから、ふぃっと俺の視線に入ってきて。


「・・・好きだよ」


なんて低い声で、しかも真顔で言うもんだから。
せっかく楽になったと思った気持ちが一気に苦しくなる。
サカモトくんも居心地が悪くなったのか、乱暴に俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜるとキッチンに行ってしまった。
その様子に思わず笑いがこみ上げてくる。
お互い、自分で言って自分で照れてりゃ世話ねぇよな。
とりあえず真っ赤になっているであろう顔を隠すため、俺は深く布団にもぐりこんだのだった。

END
----------
ちょっと前に書きました、風邪引きネタ。
まーが風邪引くよりも俄然よししこの方がモエる罠。
よししこが苦しんでるのってホント見ててもだもだしますよ ね!(こら)


**********


■頭をなでなで(23)

褒められると喜び、怒られると拗ねる。
怖いものを見れば思いっきり泣いて、手当たり次第に縋りつく。
そんなおチビちゃんが成長して、今のイノハラになった。
大きかった感情表現は自然と心の内に隠れ、大人びた表情でどんな状況にも対処する。
泣きたい時も辛い時も、何も言わずににこにこと笑うようになった。


「ねぇナガノくん、俺って偉い?」

お偉いさんから嫌味な言葉をかけられて。
危機的状況をどうにか笑顔で切り抜けた時、振り返ってイノハラがそう言った。
喋るのが得意なこの子は、どこで学んだのか他の誰も傷つかずに済む方法を知っているのだ。
ただし、自分が磨り減ってしまっていることに目を向けなければの話だけど。

「社会人としてはね」

少し考えてから、俺も無難な答えを返す。
社会の中で生きていくために、今の判断は正しかっただろう。
誰にも疎まれず、恨まれず、いい人に位置づけられて。
けれど、それを続けるには確固たる精神力が要求される。
笑顔を絶やさずに、誰にでも優しく、常に理想のいい人で居なければいけなくなる。
それを知って尚、この子はその道を選んだ。

「じゃあ、俺としてはどうなの?」
「お前としては、あんまり好きじゃないな」
「なんで?」
「今物凄い泣きそうな顔してるんだもん。我慢しないで泣けばいいのに」

しれっとそう言えば、キッと睨みつけられる。
次いで、噛み付かれそうなほどの勢いで胸倉を掴まれ、引っ張られた。
顔が至近距離になり、表情が丸見えになる。
さっきとは打って変わって突き刺さるような態度。

「人事だと思って簡単なこと言うなよ!」
「だって、人事じゃない。何、お前は俺に慰めて欲しかったの?」
「・・・っ」
「よっちゃんは偉い子だね、感情を抑えて笑って流せる大人になったねって言って欲しいんだったらそう言えばいいのに」
「五月蝿ぇっ!」

殆ど半泣きの状態でイノハラは俺に怒鳴りつけた。
俺は、ちょっと乱暴だったけどそんな彼の身体を思い切り抱きしめる。
バタバタと暴れるそれを力で押さえつけて。
一応年上だし、ガタイの良さで彼の抵抗に耐えてやった。
しっかしまた細くなったよな、この子。
ちょっと目を離した隙に無茶するんだから、困ったもんだ。
暫く暴れていたけれど敵わないと悟ったのか、段々とイノハラの暴れる力が弱くなり。
最終的に俺の肩元に顔をくっつけて、そのまま動かなくなった。

「お偉いさんは帰ったよ」
「・・・知ってる」
「ここには今、俺とお前しか居ないよ」
「・・・うん」
「我慢し続ける理由はもう、無いんじゃない?」
「・・・ん」

ごめんナガノくん。
そう言って、イノハラは俺の背中に縋りつくように手を回す。
そっと背中を叩いてやると、小さな嗚咽が耳に届いた。


「・・・偉いね、よっちゃん」


ちゃんと泣けて偉いね。
そんな意味をこめて、俺は彼の黒髪を優しく撫でる。
落ち着いたら何処か美味しいものでも奢ってあげようとぼんやり思いながら。

END
----------
23というか2+3というか。
こういう感じの飴とムチ具合の2が好きなんです。
落として落として、最後は思いっきり甘やかすくらいの。
だからきっと13の見守り役がしっくりくるのかもなーとぼんやり思ってます。


キュンとくる10のお題:あなぐら
ttp://99.jpn.org/ag/

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